2015年に施行された空き家対策特別措置法(空き家法)により、周囲に危害を及ぼす可能性のある空き家は「特定空き家」に指定され、固定資産税の増税などのペナルティが課せられる対象となります。増税幅は、なんと最大6倍。ただでさえ空き家の管理に頭を悩ませる所有者に追い討ちをかけるような同法は、早ければ2023年12月により一層、強化される見込みです。
2023年内にも「改正空き家法」施行……改正の背景
2023年6月、参議院本会議で改正空き家法が可決・成立しました。これにより、2023年内にも、特定空き家以前の「管理不全空き家」も固定資産税の増税の対象となります。
居住目的のない空き家は20年間で約2倍に増加
空き家法が強化された背景には、増え続ける空き家の問題があります。直近の調査では、空き家の数は全国で849万戸。すべての住宅に対する空き家の割合を示す空き家率は、13.6%にのぼります。
空き家問題の中でもとくに懸念されているのが、二次的利用や賃貸、売買の用途のない空き家の増加です。居住目的のない空き家は、1998年からの20年間で1.92倍にまで増加しています。
空き家の取得経緯は「相続」が半数以上
空き家が増えている大きな要因となっているのは、高齢化とそれによる相続の増加です。上記グラフのように、空き家の取得経緯の半数以上を相続が占めています。
相続した実家は、遠方にあったり、遺品整理が進まなかったりすることで空き家になってしまうケースが多くなります。家が片付いていないことから、賃貸住宅などとして活用することもできず、生まれ育った空き家を手放したくないと考える所有者も一定数いらっしゃいます。
空き家法による“ペナルティ”とは?
空き家法により、管理が行き届いていない空き家は、固定資産税が最大6倍になる措置が取られるおそれがあります。空き家のリスクは、増税だけではありません。他にも、過料や空き家の強制撤去など、段階を経てペナルティは強化されていきます。
立ち入り調査を拒んだら過料
行政は、特定空き家の指定をする前に空き家の立ち入り調査を実施します。ここで空き家の管理状況をチェックされるわけですが、この調査を拒んだ場合、最大20万円の過料に科せられる可能性があります。
勧告のタイミングで固定資産税の軽減措置から除外
特定空き家に指定された空き家の所有者は、行政から「指導」や「助言」を受けます。続く「勧告」が固定資産税が増税するタイミングです。
固定資産税が増税する理由は、以下のように固定資産税や都市計画税を軽減する住宅用地の特例が適用除外となるからです。
固定資産税課税標準額 | 都市計画税課税標準額 | |
小規模住宅用(200㎡以下の部分) | 1/6 | 1/3 |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 1/3 | 2/3 |
命令違反で過料
空き家所有者へのペナルティは、固定資産税の増税で終わりません。勧告に続く「命令」に背くと、最大50万円の過料に科される可能性があります。
最終的には代執行に
空き家所有者へのペナルティは「代執行」により空き家が撤去されるまで続きます。空き家の解体費用は、もちろん所有者に請求されます。これを支払えない場合は、その他の不動産や財産が差し押さえられ、強制的に競売にかけられてしまうおそれがあります。
新たに固定資産税増税の対象となる「管理不全空き家」とは?
改正空き家法により、新たに固定資産税増税の対象となる「管理不全空き家」は、そのまま放置していると特例空き家になるおそれのある空き家とされています。現存している特定空き家は全国で約2万戸ですが、現存する管理不全空き家の数は約23.5万戸と10倍以上にのぼります。
「特定空き家」と「管理不全空き家」の違い
増税や過料を回避するための対応策
空き家法改正を目前とした今、空き家を所有するリスクは高まりつつあります。増税や過料を避ける方法は、次の4つ。意向や状況に応じて、なんらかの対策を講じましょう。
1.管理を徹底する
空き家法により空き家の所有者にさまざまなペナルティを課す理由は、適切な管理を促すためです。特定空き家や管理不全空き家に指定されたとしても、行政の指導や助言に従い、修繕したり管理を徹底したりすれば、その後のペナルティが課されることはありません。
とはいえ、空き家が遠方にあれば適切に管理することは難しいものです。その場合は、管理業者に管理を委託するという方法もあります。管理費は月額1万円前後が相場です。
2.解体する
空き家を解体して更地にすれば、空き家法の対象にはなりません。しかし、空き家の解体には一定の費用がかかり、解体後は住宅用地ではなくなることから固定資産税の減税措置はなくなるためご注意ください。
3.活用する
空き家をただ放置しているだけでは、管理費用や固定資産税がかかり続けるマイナスの資産となってしまいます。しかし、賃貸住宅やトランクルーム、駐車場などとして活用すれば、一定の収益が見込めます。人に貸したり、なんらかの事業を営んだりすることで「空き家」ではなくなり、自ずと適正な管理もできるようになるものです。
4.売却する
空き家を売却することも選択肢の1つです。売却すれば、その後の維持・管理の負担から完全に解放されます。たとえ価値がほとんどつかなかったとしても、行政からの指導や固定資産税の増税に怯え、お金をかけて管理する状況から脱せることを考えれば、所有者のメリットは大きいものと考えられます。
空き家の活用・売却を検討される場合はお気軽にご相談ください
空き家問題は年々深刻化しており、空き家所有者への風当たりは強くなっています。人口減少や少子高齢化、都市部一極集中が進むと、空き家の活用や売却は今後ますます難しくなるものと推測されます。また、空き家はどんどん老朽化が進行するものです。経年につれ、取れる選択肢も狭まっていくことが予想されます。空き家の活用や売却を検討されている場合は、どうぞお早めに弊社までご相談ください。